応用美術の保護

著作権法第2条(定義)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一  著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。 (以下略)
2  この法律にいう「美術の著作物」には、美術工芸品を含むものとする。(以下略)

著作権法第10条(著作物の例示)
この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
(略)
四  絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物(以下略)

1 著作権法の条文上、美術工芸品は「美術の著作物」として著作権法による保護が及びます(著作権法2条2項)。
では、応用美術全般に著作権法による保護が及ぶでしょうか。
応用美術については、意匠法により保護を受けることも可能ですが、著作権法との重畳的な保護が及ぶでしょうか。 応用美術は、純粋美術に対応する概念であり、一般には次のようなものを指すと考えられています。
@実用品自体として制作される美的創作物=美術工芸品(壷、壁掛け)
A実用品と結合した美的創作物(家具の彫刻)
B実用品の模様やひな型として利用するための美的創作物(染色図案)

2 裁判例の傾向としては、美的創造物の制作過程や鑑賞色彩などを考慮して、一定の場合に応用美術についても著作物性を認め、著作権法による保護の対象としています(長崎地佐世保支決昭48.2.7、東京地判昭56.4.20、大阪高判平17.7.28等)。                    

3 いわゆる食玩フィギュアの模型原型の著作物性が争点となった大阪高判平17.7.28において、裁判所は、「美的創作物は、思想又は感情を創作的に表現したものであって、制作者が当該作品を専ら鑑賞の対象とする目的で制作し、かつ、一般的平均人が上記目的で制作されたものと受け取るもの(純粋美術)と、思想又は感情を創作的に表現したものであるけれども、制作者が当該作品を上記目的以外の目的で制作し、又は、一般的平均人が上記目的以外の目的で制作されたものと受け取るものに分類することができる」とし、「応用美術とは、後者のうちで、制作者が当該作品を実用に供される物品に応用されることを目的(以下「実用目的」という。)として制作し、又は、一般的平均人が当該作品を実用目的で制作されたものと受け取るものをいう」としたうえで、「応用美術一般に著作権法による保護が及ぶものとまで解することはできないが、応用美術であっても、実用性や機能性とは別に、独立して美的鑑賞の対象となるだけの美術性を有するに至っているため、一定の美的感覚を備えた一般人を基準に、純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価される場合は、「美術の著作物」として、著作権法による保護の対象となる場合があるものと解するのが相当である」と判断しました。

4 こうした最近の裁判例の傾向を踏まえると、意匠登録されている応用美術についても、一定の場合には著作権法による重畳的な保護が及ぶ可能性があるほか、意匠登録されていない又は意匠法による保護期間が終了した応用美術についても、著作権法による保護が及ぶと考えられます。
したがって、特に、意匠登録されていない又は意匠法による保護期間が終了した応用美術について、第三者による盗用・複製が行われた場合には、意匠法に基づく差止請求の余地はなく、また裁判実務上、不法行為に基づく差止請求の余地もほとんどありませんが、著作権法に基づいて差止請求を行うことにより、不正を防止できる余地があります。

以上
2009/4/10

           


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