計算書類等の修正再決議の可否

【テーマ】 株主総会決議を得て一旦有効に確定した計算書類等に関し、公正な会計慣行に反する誤りを発見した場合に、後の株主総会で当該誤りを修正するための再決議をすることが適法か。

問題1 決議取消訴訟等によらずに、瑕疵ある決議を将来的に修正するための再決議は有効か。

回 答 当該再決議が遡及効をもたらすものではなく、また、決議取消訴訟の提訴や決議の無効主張を回避するために会社自身に瑕疵を修正する機会を与えることは法の趣旨に反しないこと等から、当該再決議は有効であると考えられます。 裁判例においても、決議取消訴訟中に、後の株主総会で再決議をした場合の再決議の有効性が確認されています(東京高判昭27.2.13、東京地判昭27.3.28)。

問題2  計算書類等の誤りを修正するために再決議が必要か。

回 答  確かに、当該計算書類の誤りが後続期の計算書類等に影響しないのであれば、再決議をする必要がないとも思われます。 しかし、判例は、「株主総会における計算書類等の承認決議がその手続きに法令違反等があるとして取消されたときは、たとえ計算書類等の内容に違法、不当がない場合であっても、右決議は既往に遡って無効となり、右計算書類等は未確定となるから、それを前提とする次期以降の計算書類等の記載内容も不確定なものになると解さざるをえず、したがって、上告会社としては、あらためて取消された期の計算書類等の承認決議を行わなければならない・・・」とします(最判昭58.6.7)。 従って、後続期の計算書類等について適法に株主総会決議を得たとしても、瑕疵ある期の計算書類等の瑕疵は治癒されず、瑕疵ある期の計算書類等を前提とする後続期の計算書類等を完全に確定させるためには、瑕疵ある期の計算書類等の再決議を得なければならないこととなります。 上記判例の結論は、決議取消事由が存在する場合についてのものですが、これは、決議無効事由、決議不存在事由が存在する場合にも当然にあてはまるといえます(上記判例参照)。

問題3  本件のように計算書類等の内容が公正な会計慣行に反する場合も再決議を得る必要があるか。

回 答 この点、計算書類等商業帳簿の作成に関する規定の解釈については、公正な会計慣行を斟酌すべきものとされており(旧商法32条2項)、公正な会計慣行に反する計算書類等は、内容が法令違反となるから、原則として決議無効事由となります。 しかし、「公正な会計慣行」の解釈は一義的ではなく、軽微な瑕疵も含めたすべての瑕疵について、決議無効事由とするのは妥当ではありません。従って、諸説には、当該瑕疵が計算書類の「重要部分」に存する場合に限り無効事由となるとする見解があり、これによれば、当該瑕疵が「重要部分」に存する場合は再決議が必要となりますが、「重要でない部分」に存する場合は、再決議は必要ないということになります。

問題4  「重要でない部分」に瑕疵がある場合に、当該計算書類等の再決議をすることはできるか。

回 答
 この点、明確に論じた文献はありませんが、当該計算書類等に「公正な会計慣行」に照らして誤りが発見された場合、これを修正する再決議を認めないと、後に決議の無効主張ないし決議無効確認の訴えがなされ、後続期の計算書類等が不確定になる可能性を回避することができなくなってしまう可能性があること、「公正な会計慣行」に反する誤りが「重要部分」に存するか否かについては、これを事前に正確に判断することは困難であること等から、当該瑕疵が「重要部分」か否かはさておき、計算書類等に「公正な会計慣行」に反する誤りが発見された場合は、後の無効主張等を回避するため、当該計算書類等の修正再決議を認めるべきであると考えます。 結 論 以上より、株主総会決議を得て一旦有効に確定した計算書類等に関し、公正な会計慣行に反する誤りを発見した場合に、後の株主総会において当該誤りを適正な会計処理に修正する再決議を行うことは適法であると考えます。

以 上
2009/3/25

             



Copyright (C) 真法律会計事務所, All Rights Reserved.

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の事項に対して具体的なアドバイスをするものではありません。また、本記事に掲載されている情報の正確性及び最新性の確保については万全を期しておりますが、法律・政令の改正等により、最新の情報と異なる記載となる場合があり、その完全性を保証するものではありません。