全部取得条項付種類株式を用いた100%減資スキームについて (新会社法における100%減資と第三者割当増資)

 従来から、100%減資をして同時に第三者割当増資を行うことにより、会社の債務超過と資本の欠損を解消するという企業再建手法が用いられていましたが、旧商法下では、株式会社の旧株主の株式を全部消却し、資本金をゼロとする100%減資を法的再建手続以外で行うには、実務上、株主全員の同意が必要とされていました。

しかし、新会社法では、全部取得条項付種類株式を用いることで、株主総会の特別決議で結果的に100%減資をすることが可能となりました。

手続としては、まず、一度の株主総会において、以下の決議を行います。

@新たな種類株式を発行できる旨の定款変更の特別決議(会社法第309条第2項第11号、同第108条第1項第7号)
A発行済株式を全部取得条項付種類株式に変更するための特別決議及び種類株主総会の特別決議(同第309条第2項第11号、同111条第2項第1号、同第324条第2項第1号)
B全部取得条項付種類株式の全部を取得する旨の特別決議(同第171条第1項、この決議で取得の対価と取得日を定めなければなりません。)
C100%減資する旨の特別決議(同第447条、同309条第2項第9号)
D第三者に対する募集株式(新株)発行の特別決議(同第199条第2項、同第309条2項5号)

そして、Bの決議においては株式の取得の対価を無償、取得の日をクロージング日、Cの決議においては減資の効力が生ずる日をクロージング日に、Dの決議においては募集株式の払込期日をクロージング日とします。

その結果、対象会社の旧株式はクロージング日において会社が無償で全部取得することになり、一方、同日に出資金を払い込むことによってDの第三者が同社の議決権のすべてを有する株主となります。また、元の資本金の減資と第三者割当による増資の効力も同日に生じますので、対象会社の資本金はクロージング日に、出資金のうちの資本金組入れ額となります。

さらに、クロージング日当日に臨時株主総会を開催し、取締役選任等の決議を行い、引き続き新役員による取締役会において対象会社が取得した旧株式を消却する旨の決議をすることによって、対象会社の旧株式は完全に消滅します。

なお、株式を強制的に取得される旧株主の保護手続として、会社法は、全部取得条項付種類株式を発行する旨の定款変更決議がなされた場合の株式買取請求(同法第118条)、取得価格決定の決議がなされた場合の裁判所に対する価格決定の申立て(同法第172条)を定めています。本スキームにおいては、AとBの決議を同時に行いますので、反対株主は理論的には株式買取請求と価格決定の申立の両方の手段をとることができます。

ただ、買取請求においても、株式の価格について会社と協議が調わないときは、裁判所に対し価格決定の申立てをすることになりますので、本スキームに反対する旧株主がとりうる最終的な手段は、裁判所に対する価格決定の申立てということになります。 問題は、価格決定の申立がなされた場合に、裁判所が、対象会社のような債務超過会社の株式の価値をどう評価するかです。旧商法下においては、合併に反対した株主の株式買取請求に際し、合併決議前の価値で評価すべきとの裁判例が出ていますが、新会社法下ではもちろんまだ判例はありません。この点について詳しく論じた文献はほとんどありませんが、弁護士渡邊顯、同西村賢著の「新会社法3 株式制度の要点」(株式会社商事法務発行)には、「全部取得条項を付す旨の定款変更に反対の株主には株式買取請求権が認められるが、債務超過会社がこれを行う場合には、取得の対価は無償となり、買取価格も0円となろう。」と記載されております。

また、減資を行う場合には、債権者保護手続として、1か月以上の異議申述期間を設定しなければなりません(同法第449条第2項)。

以 上
2009/4/20

             



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