役員等の株式会社に対する損害賠償責任 判例A

裁判年月日: 平成12年7月7日          裁判所名 : 最高裁判所
事件名  : 野村證券損失補填株主代表訴訟事件   上訴等  : − 責任区分 : 法令違反

1.事案の概要

証券会社であるA社の株主であるXらは、Y取締役ら14名に対し、同取締役らが、大口取引先であるB社に対して行った損失補填につき、取締役としての義務に違反して会社に損害を被らせたとして、株主代表訴訟による損害賠償を請求した。
裁判所は、当該損失補填の違法性(独占禁止法違反)を認めるも、当時、Y取締役らには当該違法性についての故意・過失がなかったとして、Xらの上告を棄却した。

2.裁判所の判断  *読み易くするため一部変更

(1) 取締役の受任者としての義務を一般的に定める商法254条3項の善管注意義務、商法254条の3の法令遵守、忠実義務(以下、併せて「一般規定」という。)及びこれを具体化する形で取締役がその職務執行に際して遵守すべき義務を個別的に定める規定が、本規定にいう「法令」に含まれることは明らかであるが、さらに、商法その他の法令中の、会社を名宛人とし、会社がその業務を行うに際して遵守すべきすべての規定もこれに含まれると解するのが相当である。
取締役が右義務に違反し、会社をして右の規定に違反させることとなる行為をしたときには、取締役の右行為が一般規定の定める義務に違反することになるか否かを問うまでもなく、本規定にいう法令に違反する行為をしたときに該当する。
本件については、損失補填は、一般指定の9(不当な利益による顧客誘引)に該当し、独占禁止法一九条に違反するので、Yらの行為は違法である。

(2)もっとも、株式会社の取締役が、法令または定款に違反する行為をしたとして、損害賠償責任を負うには、右違反行為につき、取締役に故意又は過失があることを要するものと解される(最高裁昭和四八年(オ)第五〇六号同五一年三月二三日判決)。
しかし、当時Yらが、損失補填が独占禁止法に違反するとの認識を有しなかったことにはやむを得ない事情があり、過失があったとも言えないので、損害賠償責任は負わない。

3.補足

本判決は、会社が遵守すべきすべての法令について、その違反行為がなされた場合には、取締役の責任が問われうることを明らかにした点に意義があります。
もっとも、本事案では、結論として法令違反について取締役らの故意過失がなかったことを理由に、賠償責任は否定されました。

以 上
2009/9/11

             


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