役員等の株式会社に対する損害賠償責任 判例D

裁判年月日: 平成8年12月11日         裁判所名 : 東京高裁
事件名  : 東京都観光汽船株主代表訴訟事件    上訴等  : 上告(棄却)
責任区分 : 善管注意義務違反、関連会社に対する貸付や債務保証

1.事案の概要    

株主代表訴訟において、会社の元代表取締役や取締役らが、回収不能になる危険が具体的に予見できる状況にありながらグループ企業に対して貸付や保証をしたことが、取締役としての裁量権の範囲を逸脱し、善管注意義務違反等を構成するとされた事例。

2.裁判所の判断  *読み易くするため一部変更

(1)株主代表訴訟の提起が権利濫用か否かについて     

株主代表訴訟の提起が、専らないし主として会社や取締役を脅しあるいは困惑させ、これによって会社や取締役から不当な個人的利益を得ることを意図したものであるとか、取締役の違法行為が軽微ないしかなり古い過去のものであり、かつ会社に生じた損害も少額であり、今更取締役の責任を追及する必要性に乏しいなど特段の事情の認められない限り、株主代表訴訟の提起は株主権の濫用とはならない。     
本件では、一審原告らの訴訟提起が権利濫用とまでいうことは困難である。

(2)グループ企業に対する貸付や債務保証について     

会社の取締役が、会社の経営上特段の負担にならない限度において、グループ企業に対して金融支援をすることは、それが担保を徴しない貸付けや債務保証であっても、原則として取締役の裁量権の範囲内であり、善管注意義務に違反するものではなく、結果的に債権の回収ができなくなったとしてもそのことだけから会社に対して損害賠償責任を負うものではない。     
しかし、支援先の企業の倒産することが具体的に予見可能な状況にあり、当該金融支援によって経営の建て直しが見込める状況になく、従って貸付金が回収不能となり、又は保証人として代位弁済を余儀なくされた上、弁済金を回収できなくなる危険が具体的に予見できる状況にあるにもかかわらず、なお、無担保で金融支援をすることは、もはや取締役としての裁量権の範囲を逸脱し、会社に対する善管注意義務・忠実義務に違反するため、会社の被った損害を賠償する責任がある。     
本件では、昭和58年10月に融通手形の交換先が倒産し、グループ企業が約1億円の債務を負った時点で、当該企業が倒産することが具体的に予見可能な状況になった以上、それ以降の新規貸付や債務保証は差し控えるべきであり、仮に実行するとしても確実な担保を徴収するなどの十分な債権保全措置を講ずべきであったにも関わらず、これを怠ったとして、元代表取締役の善管注意義務違反、取締役らの監視義務違反を認め、会社に対する約1億円の損害賠償責任を認めた。

以 上
2009/10/27

             


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