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テーマ:退職した元従業員に対する競業差止め〜トータルサービス事件
(東京地方裁判所平成20年11月18日判決)

1.事件の概要
  
会社(原告)に雇用されていた被告が、在職中及び退職時に締結した機密保持契約に基づく競業避止義務に違反したとして、会社が被告に対し、損害賠償及び競業避止義務違反行為の差止めを請求した。   

裁判所は、原告会社が被告と締結した退職後の競業禁止特約の有効性を認め、
@競業禁止特約に定められた損害賠償の予定額の7割、A会社のフランチャイズ契約上のロイヤリティの7割、B売上減少額としての損害100万円の損害賠償を命じたほか、判決確定後2年間に限り、被告に対し原告会社と競業する事業を行ってはならないとの判決を下した。

2.解説
  
就業規則において退職後における競業禁止条項を定めたり、退職時に書面で競業禁止の誓約書を取り付ける会社は多いと思われます。   
しかし、退職した従業員は、在職時に得た知識・経験等を生かして新たな職について生活していかざるを得ないのが通常ですから、従業員が退職後に同種業務に就くことを禁止することは、職業選択の自由に対する大きな制約となります。   
本件においても、形式的に競業禁止特約を結んだからといって、当然にその文言どおりの効力が認められるものではないとしたうえで、競業禁止によって守られる利益の性質や特約を締結した従業員の地位、代償措置の有無等を考慮し、禁止行為の範囲や禁止期間が適切に限定されているかを考慮したうえで、競業禁止義務が認められるか否かが決せられるべきと判示しています。   
この事案の原告は車両外装のへこみを修復する事業及び家具・車両内装の修復や色替えを中心とした事業のフランチャイズを行う会社であり、被告はインストラクターとして加盟店への技術指導及び車関連事業の直営施行を担当するなどしており、被告に同技術を取得させるために米国研修を受けさせるなど、会社は手間と多額の費用を掛けていました。   
裁判所は、競業禁止によって守られる利益を営業秘密と認識し、原告の主張事実を秘密管理性、非公知性、有用性の有無から検討し、車両外装のへこみを修復する技術と家具・車両内装の修復や色替えを行う技術を「不正競争防止法にいう営業秘密にはあたらないが、それに準じる程度には保護に値する」と判示しました。また、上記被告の地位からして、秘密を守るべき高度の義務を負うものとすることが衡平に適うこと、また、被告が同種事業を営みたいのであれば、独立支援制度としてフランチャイジーとなる途があり、代償措置として不十分とはいえないと判断しています。   損害額としては、競業禁止特約においてあらかじめ定められていた違約金の7割、フランチャイズ契約の7割、売上げ減少の一部を認定し、競業差止めの期間は、「技術の陳腐化や原告が上記技術を独占できるわけではないこと等を考慮」して、判決確定後2年間に限定しています。   
本件は、会社がフランチャイズ事業をしていたことが、損害額の認定や代償措置の評価において大きな意味を持ったものと思われます。

以 上
2009/4/20

             


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