最新労働裁判例紹介A

テーマ:欠勤期間の通算を内容とする休職に関する就業規則の変更の有効性     
(東京地方裁判所平成20年12月19日判決)

1.事件の概要   

被告会社の従業員(上級専門職員)である原告は、平成17年7月1日、傷病(心因反応(適応障害))による欠勤を始め、平成18年12月に傷病による欠勤期間が満了したため、平成19年1月から休職中であった。   
被告会社の就業規則の休職規定には、休職を命じる条件として「傷病又は事故により、次表の欠勤日数をこえて引き続き欠勤するとき」と定められており、そのただし書きは、平成18年4月1日以前は「欠勤後一旦出勤して3ヶ月以内に再び欠勤するとき(中略)は、前後通算する。」となっていたが、同日以降「欠勤後一旦出勤して6ヶ月以内または、同一ないし類似の事由により再び欠勤するとき(中略)は、中断せずにその期間を前後通算する。」と変更された。 原告は、当該就業規則の休職に関する規定の改正が不利益変更であると主張して、改正前の就業規則の適用を受ける地位にあることの確認及び就業規則等の交付その他を求めた。   裁判所は、上記就業規則の変更は、必要性及び合理性を有するもので、就業規則の変更として有効であるとして、原告の訴えを退けた。

2.解説   

個別労働者の同意がなく、就業規則の変更により労働条件を不利益に変更するためには、当該就業規則の変更に相当の合理性がなければなりません(就業規則の不利益変更の法理)。   
被告会社では、休職前欠勤は相当の給与が支給されますが、休職期間中は無給になってしまうため、欠勤期間の通算の範囲を広げ、休職の要件を緩和することになる本件就業規則の変更は、労働者に不利益な変更といえます。   
裁判所は、この就業規則の不利益変更について、「近時いわゆるメンタルヘルス等により欠勤する者が急増し、これらは通常の怪我や疾病と異なり、一旦症状が回復しても再発することが多いことは被告が主張するとおりであり、現実にもこれらにより傷病欠勤を繰り返す者が出ていることも認められるから、このような規定を設ける必要があったことは否定できない。」として必要性を認め、また、過半数組合の意見を聴取し異義がなかったといった事情により合理性もあるとして、上記変更後の規定を有効と判示しました。   
この判決も認めるとおり、この数年、精神障害を発症する労働者が急増しており、多くの企業が頭を悩ませています。通常の会社の就業規則には、一定期間を継続して欠勤した場合にその後の欠勤期間を休職とする規定や休職期間満了の場合の退職の定めがありますが、再発を伴う精神障害による断続的な欠勤を想定していないケースも多いと思われます。本判決は、こうした事象に対応した就業規則の変更を有効と認めたもので、企業の労務管理者にとって有益な結論であるといえます。   
ただ、本件は、有給欠勤期間の満了の条件を緩和する変更の有効性を認めた事例であり、自動退職に至る休職期間満了の条件を緩和する変更についても同様の結論が下されると安易に考え得るべきではないでしょう。

以 上
2009/4/28

             


Copyright (C) 真法律会計事務所, All Rights Reserved.

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の事項に対して具体的なアドバイスをするものではありません。また、本記事に掲載されている情報の正確性及び最新性の確保については万全を期しておりますが、法律・政令の改正等により、最新の情報と異なる記載となる場合があり、その完全性を保証するものではありません。