最新労働裁判例紹介B

テーマ:私傷病休職期からの復職可否の判断の妥当性      
(大阪地方裁判所平成20年1月25日判決)

1.事件の概要   

被告会社の従業員である原告(コンピューターのプログラマー)は、平成15年7月10日から私傷病(自律神経失調症及びクッシング症候群)を理由に病気休職中であったが、平成16年8月1日からの復職の意思を表示し、現に復職が可能であったにもかかわらず、会社にこれを拒否され、平成17年7月9日をもって休職期間が満了したことにより退職として扱われたことは理由のない就労拒絶であるとして、従業員としての地位確認、平成16年8月1以降の賃金及び賞与等の支払を求めた。   
裁判所は、原告の罹患していた疾病の性質等から、平成16年8月1日の時点では、原告の病状が復職可能な程度に回復していたと判断できるだけの資料が提出されていたとは言い難いが、原告の担当医の診断結果等からすれば、遅くとも平成17年7月9日の休職期間満了時には、原告の病状は会社における就労が可能な程度まで十分回復していたということができ、原告から債務の本旨に従った労務の提供があったということができるとして、被告会社に対し、賃金、平成19年下記賞与までの各賞与について定められた月数に最低ランクの効果掛率を乗じた賞与、慰謝料及び弁護士費用等の支払を命じた。

2.解説   

本件の原告である労働者は、休職期間中2度にわたって書面により復職を願い出ましたが、会社はいずれもこれを受け入れず、就業規則の定めに従って2年間の休職期間満了により労働者を退職扱いにしました。   
裁判所は、原告の2人の担当医から出された「通常の労務に服することが可能と判断される」、「通常の労務就業に支障ない」との診断書は、原告の病状が復職可能な程度に回復していたと判断できる資料として充分であると判断しました。   
そして、原告が、債務の本旨に従った労務の提供ができる状態にあり、復職の意思を明確に示していたにもかかわらず、被告会社が復職を受け入れず、原告を退職扱いにしたことにより原告は労務の提供ができなかったのであるから、原告は賃金等の請求権を喪失しない(民法536条2項)と判断したのです。   
被告会社には、当時、営業職、事務職、技術職の3種類があり、技術職はさらに開発部門とサポート部門に分かれていました。原告は、入社以来、一貫して技術職に就いており、休職当時は開発部門に属していました。会社は、開発部門は残業が非常に多く、原告は、復職先である開発部門で最低限要求される就労が可能な程度までは回復していないと主張しました。   
しかし、裁判所は、「労働者が職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては、現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にできないとしても、その能力、経験、地位、当該企業の規模、業種、当該企業における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務務について労務の提供をすることができ、かつ、その提供を申し出ているならば、なお債務の本旨に従った履行の提供があると解するのが相当である。」とする判例(最高裁平成10年4月9日判決)を引用し、被告会社は原告をサポート部門に配置することも可能だったはずであり、開発部門以外の他の職種における原告の就労可能性を具体的に考慮した事情が窺えない本件においては、原告から債務の本旨に従った労務の提供はなかったとの主張は認められないと判示しました。

以 上
2009/7/6

             


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